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東京高等裁判所 平成9年(行ケ)313号 判決 1999年3月18日

東京都千代田区丸の内2丁目2番3号

原告

三菱電機株式会社

代表者代表取締役

北岡隆

訴訟代理人弁理士

竹中岑生

東京都千代田区霞が関3丁目4番3号

被告

特許庁長官

伊佐山建志

指定代理人

祖父江榮一

斉藤操

井上雅夫

廣田米男

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第1  当事者の求めた裁判

1  原告

特許庁が平成7年審判第9591号事件について平成9年9月29日にした審決を取り消す。

訴訟費用は被告の負担とする。

2  被告

主文と同旨

第2  請求の原因

1  特許庁における手続の経緯

原告は、昭和63年9月1日に発明の名称を「マイクロコンピュータ」とする発明(以下「本願発明」という。)について特許出願(昭和63年特許願第221120号)をしたところ、平成7年3月6日に拒絶査定を受けたので、同年5月8日に拒絶査定不服の審判を請求し、平成7年審判第9591号事件として審理された結果、平成9年9月29日に「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決を受け、平成9年11月4日にその謄本の送達を受けた。

2  特許請求の範囲(別紙図面1参照)

バスを介して接続されたメモリと中央演算処理装置とを備えて成るマイクロコンピュータにおいて、

前記バスを介して前記メモリと前記中央演算処理装置との間に接続されていて、基本クロック信号入力部を有し、入力される基本クロック信号に基づいて、前記メモリの動作速度を規定する第1のクロック信号と、この第1のクロック信号より周波数の高い前記中央演算処理装置の処理速度を規定する第2のクロック信号とを生成する機能を備えるものであって、前記中央演算処理装置に前記第2のクロック信号を供給して当該第2のクロックに同期させて前記中央演算処珪装置からのアドレスを前記メモリに出力して前記メモリと前記中央演算処理装置とを同期させて動作させるとともに、前記中央演算処理装置より前記第2のクロック信号に同期して出力させるデータ信号を入力して、このデータ信号を前記第1のクロック信号に対応した周期のデータ信号に変換し、この変換されたデータ信号を、前記第1のクロック信号に対応させて前記メモリに書込む制御手段

を備えたことを特徴とするマイクロコンピュータ。

3  審決の理由

別添審決書の理由の写のとおりである。

4  審決の取消事由

審決の理由AないしCは認める。同Dは争う(ただし、原告の平成9年7月22日付手続補正書による補正に関する「(1)上記C.(1)で、Amemの開始に関して、「第2図(e)に示すように、メモリ4へのアドレス信号Amemは第2のクロック信号φcに同期してメモリ4へ出力されている」としている」(11頁末行ないし12頁4行)及び「(2)上記C.(1)で「中央演算処理装置1からのアドレス信号Acpuは書込み制御回路6を介してスルーされ、アドレス信号Amemとしてメモリ4に出力される。つまり、メモリ4へのアドレス出力は、中央演算処理装置1が出力したアドレスを書込み制御回路6が受けて直ちにメモリ4へ送出される(スルーされる)としている。」(12頁10行ないし16行)との認定は認める。)。

審決は、本願明細書及び本願書添付図面には当業者が容易に実施をすることができる程度に技術的事項が記載されているのに、これを看過したものであって、違法であるから、取り消されるべきである。

(1)ア  本願明細書のAmemの開始に関して、「第2図(e)に示すように、メモリ4へのアドレス信号Amemは第2のクロック信号φcに同期してメモリ4へ出力されている」の意味は、次のとおり明らかである。

別紙図面1の第1図に示すように、書込み制御回路6にはクロック信号φが入力されており、書込み制御回路6はクロック信号φをもとに動作している。そのため、書込み制御回路6の出力であるアドレスバス7のアドレス信号Amemはクロック信号φに基づき、それに同期して動作している。クロック信号φcはクロック信号φが中央演算処理装置1にそのまま供給されているものであり、クロック信号φとクロック信号φcとは同じものであるから、アドレス信号Amemは第2のクロック信号φcに同期して、アドレス信号Acpuと同じタイミングで、すなわち、同じサイクルでメモリ4へ出力されることが明らかである。ここに、「同期」とは、「二つ以上の信号や処理のタイミングが合うこと」を意味するものであることは、いうまでもない。第2のクロック信号φcは、クロック信号φがそのまま供給されることにより生成され、アドレス信号Amemは、第2のクロック信号φcと同一の信号であるクロック信号φに基づいて生成され、それにタイミングをあわせて動作するものである。

このように、第2のクロック信号φcとアドレス信号Amemとの生成過程及びタイミングにおける関係は明白であって、第2図はこのような相互関係を明示しているものである。

イ  被告は、複数の装置に同一のクロック信号を与え、それら装置を同一のクロック信号で動作させることと、それら装置の信号の授受や処理のタイミングが合うこととは全く関係のないことである旨主張する。しかし、本願発明のマイクロコンピュータは、単に中央演算処理装置1及び書込み制御回路6が同一のクロック信号で動作するだけではなく、次の<1>、<2>のような動作を行うものであって、アドレス信号Amemは第2のクロック信号φcに同期して、アドレス信号Acpuと同じタイミングでメモリ4へ出力されるものであるから、被告の主張は理由がない。

<1> アドレス信号AcPuの書込み制御回路6への入力による中央演算処理装置1での書込み処理サイクルに応じて、アドレス信号Amemのメモリ4への入力によるメモリ4へのアクセスが開始される。

<2> アドレス信号Acpuはクロック信号φcの立上りに応じて出力され、アドレス信号Amemは前記クロック信号φcの立上りに対応するクロック信号φの立上りに応じてメモリ4へ出力されるものであり、アドレス信号Acpuの書込み制御回路6への入力と同じタイミングでアドレス信号Amemのメモリ4への入力が行われる。

(2)ア  本願明細書の「中央演算処理装置1からのアドレス信号Acpuは書込み制御回路6を介してスルーされ、アドレス信号Amemとしてメモリ4に出力される。つまり、メモリ4へのアドレス出力は、中央演算処理装置1が出力したアドレスを書込み制御回路6が受けて直ちにメモリ4へ送出される(スルーされる)」との記載は、中央演算処理装置1が出力したアドレスを受けた書込み制御回路6が、このアドレスを「直ちに」、すなわち、「時間的間隔を置くことなく、直に」メモリ4へ送出することを意味することは明らかであり、その技術的意味に疑問の余地はない。

このような書き込み制御回路6の構成は、本願明細書の記載から当業者が容易に実施し得るものである。すなわち、高速動作するアドレス信号Acpuをラッチし、ある期間保持する周知のラッチ回路を基本構成とする極めて一般的な構成で実現できる。ここでいうラッチ回路とは、いうまでもなく、タイミシグ入力Tとしてのラッチ信号が入力された瞬間のデータ入力Dを次のラッチ信号が入力されるまで出力信号Qとして出力し続けるものである。その回路構成は、当業者ならずとも当然に導き出せるものであるが、その一例を示せば、別紙図面2のようになる。その(a)は回路構成図、(b)はタイムチャートである。別紙図面2(b)に示すT1のタイミングにおいて、中央演算処理装置1からのアドレス信号Acpuがラッチ回路[Ⅰ]のデータ入力Dとして入力されると、タイミング入力Tとしての信号<1>の入力があるので、このアドレスは出力信号Qとして直ちに出力され、アドレス信号Amemとしてメモリ4へ送出される(スルーされる)のである。

イ  被告は、出力信号は入力信号の読取り開始から所定の時間遅れを持って出力されるから、「時間的に間隔を置くことなく、直ちに」アドレスバス上の信号を取り込むと、全く意味がないものを取り込み、その結果として、その出力もまた無意味なものとなると主張する。

純理論的かつ微視的な観点からは、信号の伝達の遅れ、すなわち、信号の確定のための時間が存在することは否定し得ないが、そのような微小時間は、クロック信号のパルス幅、すなわち、クロック信号の立上りから立下りまでの時間に比べて、実質的に無視できる程度の時間に過ぎない。そうでなければ、クロック信号によるタイミング制御が的確に遂行できないことが明白だからである。原告は、このような実質的に無視できる程度の微少時間を捨象し、中央演算処理装置1が出力したアドレスを受けた書込み制御回路6が、このアドレスを「直ちに」、すなわち、実質的に余分な「時間的間隔を置くことなく、直に」メモリ4へ送出するとして、実質的な観点から論を進めているものであって、被告の主張は不当である。

ウ  また、被告は、本願明細書及び本願書添付図面には、制御回路6が原告が示す別紙図面2(a)のような構成であることを示すものは存在せず、この回路構成は本願明細書及び本願書添付図面記載事項とは全く関係ない旨主張する。しかし、別紙図面2に示す事項は、本願明細書及び本願書添付図面を参照すれば、少なくとも当業者においては容易に実施できるものであって、被告の主張は当を得ていない。

(3)ア  本願明細書の「制御回路6からメモリ4に出力されるAmemを引き延ばす必要があること」についても、そのような必要性についての認識がありさえすれば、本願明細書の記載から当業者が容易に実施し得るものである。

すなわち、アドレス信号Amemを引き延ばすための構成は、当業者ならずとも容易に実施し得るものであって、上述した別紙図面2の構成を、その一例として示すことができる。

このような構成は、別紙図面2に示す周知のラッチ回路[Ⅰ]におけるタイミング入力Tとしての信号<1>について、別紙図面2(b)におけるタイミングT1での信号発生後は、タイミングT3まで信号を発生しないように、その信号間隔を長くすればよいだけのことである。

これは、例えば、周知のラッチ回路[Ⅱ]を用い、データ入力Dとして書き込み制御信号5を入力し、タイミング入力Tとしてクロック信号φの反転信号φを入力して、ラッチ回路[Ⅱ]の反転出力信号Qとクロック信号φとの論理積(AND)をとったものを、信号<1>とすればよいのである。

イ  被告は、別紙図面2(a)として示す回路構成図は、本願明細書及び本願書添付図面記載事項とは全く関係のないものであるばかりでなく、その動作も原告主張のとおり動作しない旨主張するが、別紙図面2に示す事項は、本願明細書及び本願書添付図面を参照すれば、少なくとも当業者においては、容易に実施できるものであって、被告の主張は当を得ていない。

(4)  以上のとおり、本願明細書及び本願書添付図面は、当業者が容易に実施をすることができる程度に記載されたものであって、本件審決は不当である。

第3  請求の原因に対する認否及び被告の主張

1  請求の原因1ないし3の事実は認め、同4は争う。審決は認定判断を誤っておらず、何ら違法な点は存在しない。

2  被告の主張

(1)ア  原告は、クロック信号φとクロック信号φcとは同じものであるから、アドレス信号Amemは第2のクロック信号φcに同期して、アドレス信号Acpuと同じタイミングで、すなわち、同じサイクルでメモリ4へ出力されることが明らかであると主張する。

装置は与えられるクロック信号によって処理が進行する。しかし、これは装置自体の処理であり、との装置が他の装置とデータの授受を行うには、他の装置から与えられる信号を、何を契機にどの時点で読込むのか、内部処理によって得られた出力信号をどの時点で出力し、出力したことをいかにして相手装置に伝えるか等を規定する必要がある。複数の装置に同一のクロック信号を与え、それら装置を同一のクロック信号で動作させることと、それら装置の信号の授受や処理のタイミングが合うこととは全く関係のないことである。ところが、本願明細書及び本願書添付図面には、アドレス信号Acpuが中央演算処理装置1からどの時点で出力されるのか、その信号を書込み制御回路6がどの時点で、何を契機に読込みを開始するのか、アドレス信号Amemが書込み制御回路6からどの時点で出力されるのか全く特定されていない。

クロック信号φとクロック信号φcとは同じものであることのみを根拠に、アドレス信号Amemは第2のクロック信号φcに同期して、アドレス信号Acpuと同じタイミングで、すなわち、同じサイクルでメモリ4へ出力されるとする原告の主張は、本願明細書及び本願書添付図面の記載に基づかないものであり、コンピュータ技術において自明あるいは当然のことでもない。

イ  また、原告は、第2のクロック信号φcとアドレス信号Amemとの生成過程及びタイミングにおける関係は明白であって、第2図はこのような相互関係を明示しているものであると主張する。

しかし、本願書添付図面の第2図には各信号が羅列されているのみで、各信号間のタイミング関係及び依存関係は何も示されていない。したがって、第2のクロック信号φcとアドレス信号Amemとの生成過程及びタイミングにおける関係は、本願明細書及び本願書添付図面には開示されていないのである。

(2)ア  「スルー」という語は、情報処理の技術分野で明確な意味を有する語として一般的に使用されるものではなく、本願明細書にも全く定義はされていない。しかるに、原告は、「時間的間隔」という新たな語を何ら定義することなく用い、「スルー」が「時間的間隔を置くことなく、直に」と主張するのみで、その根拠を示していないから、「スルー」の技術的意味は、依然として明らかではない。

イ  装置から出力された信号は、出力の開始後直ちに確定するものではなく、何らかの時間遅れをもって確定する。前段の装置から出力された信号を後段の装置で読込むためには、前段装置から出力される信号が確定するのを待って読込み動作を開始しなければならないこと、そして、読込んだ信号から出力すべき信号を作成するには、内部の回路が動作し安定した出力を得るための時間が必要であること、そのため、出力信号は入力信号の読取り開始から所定の時間遅れを持って出力されることは技術常識である。本願発明においても、中央演算処理装置がメモリアクセスのためのアドレスの出力を開始した直後はアドレスバス上のアドレス情報は不確定な状態であり、中央演算処理装置がアドレスの出力を開始した時、「時間的間隔を置くことなく、直に」アドレスバス上の信号を取り込むと、全く意味のないものを取り込み、その結果として、その出力もまた、無意味なものとなる。

ウ  本願明細書及び本願書添付図面には、書込み制御回路6の構成を示唆する記載はなく、書込み制御信号5がどのような働きをし、どのように利用するかに関する開示も存在しない。本願明細書及び添付図面には、書込み制御回路6が原告が示す別紙図面2(a)のような構成であることを示すものは存在せず、この回路構成が、本願明細書及び本願書添付図面記載事項とは全く関係のないものであることは明らかである。

また、原告は別紙図面2(b)を本願明細書の第2図に相当するとしている。しかし、別紙図面2(b)はT1、T2、T3における各信号の時間関係を明記し、更に本願添付図面の第2図には存在しない「信号<1>」を付加するものである。別紙図面2(b)は本願明細書及び第2図が有しない重大な技術的意味を付加するものであり、これを本願明細書の第2図に相当するとする原告の論は不当なものである。

更に、原告は別紙図面2(a)の説明として、別紙図面2(b)に示すT1のタイミングにおいて、中央演算処理装置1からのアドレス信号Acpuがラッチ回路[Ⅰ]のデータ入力Dとして入力されると、タイミング入力Tとしての信号<1>の入力があるので、このアドレスは出力信号Qとして直ちに出力され、アドレス信号Amemとしてメモリ4へ送出される(スルーされる)のであるとしている。しかし、その別紙図面2からも明らかなように、T1のタイミングでは中央演算処理装置1からのアドレス信号Acpuは確定しておらず、ラッチ回路[Ⅰ]のデータ入力Dは不確定の状態である。そのため、「タイミング入力Tとしてのラッチ信号が入力された瞬間のデータ入力Dを次のラッチ信号が入力されるまで出力信号Qとして出力し続ける」ラッチ回路の出力は全く無意味なものであり、「中央演算処理装置1からのアドレス信号Acpuがラッチ回路[Ⅰ]のデータ入力Dとして入力されると、タイミング入力Tとしての信号<1>の入力があるので、このアドレスは出力信号Qとして直ちに出力され、アドレス信号Amemとしてメモリ4へ送出される(スルーされる)」ことはあり得ない。

すなわち、原告が別紙図面2(a)及び別紙図面2(b)に示すものは、本願明細書及び本願書添付図面記載事項とは全く関係のないものであるばかりでなく、その動作も、中央演算処理装置1からのアドレス信号Acpuを「時間的間隔を置くことなく、直に」メモリ4へ送出するものではない。

(3)  原告は、アドレス信号Amemを引き延ばすための構成は、当業者ならずとも容易に実施し得るものであって、上述した別紙図面2の構成を、その一例として示すことができると主張する。しかし、原告が別紙図面2(a)として示す回路構成図は、本願明細書及び本願書添付図面記載事項とは全く関係のないものであるばかりでなく、その動作も原告主張のとおり動作しないことは前述したとおりである。

第4  証拠

証拠関係は、本件記録中の書証目録のとおりであるから、これを引用する。

理由

第1  請求の原因1ないし3の事実は当事者間に争いがない。また、審決の理由AないしCの事実も当事者間に争いがない。

第2  審決の取消事由について判断する。

1  甲第2ないし第9号証によれば、本願発明の書込み制御手段は、中央演算処理装置とメモリで使用するクロック信号を分離し、それぞれの動作速度に見合った異なる周波数に設定した場合であっても、中央演算処理装置より出力させるデータ信号を入力して、このデータ信号をより周波数の低いクロック信号に対応した周期のデータ信号に変換し、この変換されたデータ信号を、メモリに書込むというものであることが認められる。しかし、これが円滑にされるためには、中央演算処理装置の出力と書込み制御手段の読込むタイミング、また、書込み制御手段の出力とメモリの読込むタイミングが適切なものでなければならないところ、甲第2ないし第9号証によれば、審決の理由Bの6頁8行ないし11行及びDの13頁15行ないし18行の摘示に係る本願明細書の「前記メモリと前記中央処理装置とを同期させて動作させる」、「メモリ4は、高速で動作している中央演算処理装置1と同期してメモリ書込み動作に入る」との記載は、上記2つのタイミングを含む中央処理装置とメモリにおける動作のタイミングに関する記載と認められる。

そして、甲第2ないし第9号証によれば、この点に関して、本願発明の実施例においては、従来例と異なり、中央演算処理装置1とメモリ4との間に書込み制御回路6が設けられ、書込み制御回路6は、中央演算処理装置1からのアドレス信号Acpuが入力され、これをアドレス信号Amemに変換し、メモリ4に出力するというものであることが認められる。しかし、これによって得られる中央演算処理装置1、書込み制御回路6及びメモリ4の動作のタイミングがいかなるものであるかを知るためには、書込み制御回路6に、中央演算処理装置1のアドレス信号Acpuを、何を契機としてどの時点で読込むのか、書込み制御回路6に読込まれたアドレス信号Acpuをどのように内部処理してAmemに変換するのか、内部処理によって得られたアドレス信号Amemをどの時点で出力し、出力したことをどのようにしてメモリ4に伝えるかを規定する必要があることは明らかである。

ところが、甲第2号証ないし第9号証によれば、本願書添付図面の第2図に本願発明の一実施例の動作を示すタイムチャートがあり、それには、(a)クロック信号φ、(b)第2のクロック信号φc、(c)アドレス信号Acpu、(e)アドレス信号Amemの各信号が羅列されているものの、本願明細書及び本願書添付図面には、上記各信号間のタイミング関係及び依存関係について開示がないことが認められる。

そうすると、書込み制御回路が中央演算処理装置との関連において、どのようなタイミングでメモリに出力するのか不明であるから、本願明細書の上記「前記メモリと前記中央処理装置とを同期させて動作させる」、「メモリ4は、高速で動作している中央演算処理装置1と同期してメモリ書込み動作に入る」との記載は、いかなることを意味するのか不明であるといわざるを得ない。

2(1)  そして、上記のとおり、本願明細書及び本願書添付図面には、上記各信号間のタイミング関係及び依存関係について開示がないから、平成9年7月22日付手続補正書の(1)における「第2図(e)に示すように、メモリ4へのアドレス信号Amemは第2のクロック信号φcに同期してメモリ4へ出力されている」との補正について、第2図が、上記の「同期」が何を意味するのか示すものとは認められないとした審決の認定判断に誤りはない。

(2)  原告は、クロック信号φとクロック信号φcとは同じものであるから、アドレス信号Amemは第2のクロック信号φcに同期して、アドレス信号Acpuと同じタイミングで、すなわち、同じサイクルでメモリ4へ出力されることが明らかであると主張する。しかし、複数の装置に同一のクロック信号を与え、各装置を同一のクロック信号で動作させた場合に、上記各装置の信号の授受や処理のタイミングが合うということが自明ないし当然であると認めるに足りる証拠はないから、クロック信号φとクロック信号φcとは同じものであるとしても、そのことから直ちに、「アドレス信号Amemは第2のクロック信号φcに同期して、アドレス信号Acpuと同じタイミングで、すなわち、同じサイクルでメモリ4へ出力される」ということはできない。

この点に関して、原者は、<1>アドレス信号Acpuの書込み制御回路6への入力による中央演算処理装置1での書込み処理サイクルに応じて、アドレス信号Amemのメモリ4への入力によるメモリ4へのアクセスが開始される、<2>アドレス信号Acpuはクロック信号φcの立上りに応じて出力され、アドレス信号Amemは前記クロック信号φcの立上りに対応するクロック信号φの立上りに応じてメモリ4へ出力されるものであり、アドレス信号Acpuの書込み制御回路6への入力と同じタイミングでアドレス信号Amemのメモリ4への入力が行われることをその主張の根拠とする。しかし、<1>については、メモリ4へのアクセスの開始が、中央演算処理装置1での書込み処理サイクルに「応じて」行われる、すなわち、両者に因果関係があることは認められるものの、それが「同じタイミングで」ないし「同期して」行われるとの趣旨と解することはできない。また、<2>については、本件全証拠によっても、本願明細書に「アドレス信号Acpuはクロック信号φcの立上りに応じて出力され」、「アドレス信号Amemは前記クロック信号φcの立上りに対応するクロック信号φの立上りに応じてメモリ4へ出力される」、「アドレス信号Acpuの書込み制御回路6への入力と同じタイミングでアドレス信号Amemのメモリ4への入力が行われる」との各記載があるとは認められない。のみならず、単にアドレス信号Acpuが「クロック信号φcの立上りに応じて出力」され、アドレス信号Amemが「クロック信号φcの立上りに対応するクロック信号φの立上りに応じてメモリ4へ出力される」ことの記載のみから、「アドレス信号Acpuの書込み制御回路6への入力と同じタイミングでアドレス信号Amemのメモリ4への入力が行われる」ともいえない。

したがって、原告の主張は理由がない。

3(1)  原告は、本願明細書の「中央演算処理装置1からのアドレス信号Acpuは書込み制御回路6を介してスルーされ、アドレス信号Amemとしてメモリ4に出力される。つまり、メモリ4へのアドレス出力は、中央演算処理装置1が出力したアドレスを書込み制御回路6が受けて直ちにメモリ4へ送出される(スルーされる)」との記載は、中央演算処理装置1が出力したアドレスを受けた書込み制御回路6が、このアドレスを「直ちに」、すなわち、「時間的間隔を置くことなく、直に」メモリ4へ送出することを意味することは明らかであり、その技術的意味に疑問の余地はないと主張する。

しかし、弁論の全趣旨によれば、中央演算処理装置1からのアドレス信号Acpuを書込み制御回路6において正確に読込むためには、アドレス信号Acpuの確定を待つ時間が必要であり、また、読込んだ後においてもメモリ4へのアドレス信号Amemを作成するための時間が必要であり、そのため、出力信号は入力信号の読取り開始から所定の時間遅れを持って出力されることは技術常識であると認められる。したがって、原告の「中央演算処理装置1が出力したアドレスを受けた書込み制御回路6が、このアドレスを「直ちに」、すなわち「時間的間隔を置くことなく、直に」メモリ4へ送出することを意味する」との主張は採用することができない。

(2)  この点に関して、原告は、信号の確定のための時間が存在することは否定し得ないとしつつ、そのような微小時間は、クロック信号のパルス幅、すなわち、クロック信号の立上りから立下りまでの時間に比べて、実質的に無視できる程度の時間に過ぎない旨主張するけれども、本願発明は、書込み制御手段を備えたことを特徴とするものであるにもかかわらず、その動作のタイミングに関して、何故に無視できるのかという理由は明らかでないから、原告の主張は採用できない。

(3)  また、原告は、書込み制御回路6の構成は、本願発明の明細書の記載から当業者が容易に実施し得るものであるとして、別紙図面2を一例として示す。

しかし、同図面2(b)に示されるT1のタイミングでは、中央演算処理装置1からのアドレス信号Acpuはまだ確定していないものと解されるから、その時点で、タイミング入力として信号<1>がラッチ回路[I]に入力されたとしても、その出力端子Qにはアドレス信号Acpuに対応するアドレス信号Amemは出力されないものといわざるを得ない。したがって、同図面2(a)の回路構成図を、中央演算処理装置1が出力したアドレス信号Acpuを、「時間的間隔を置くことなく、直に」メモリ4へ送出するものを示したものと認めることはできない。

したがって、平成9年7月22日付手続補正書の(1)の補正に関し、中央演算処理装置1・制御回路6・メモリ4の構成、それらの制御関係あるいはタイミング関係等技術的内容が開示され、「同期」に関する事項が開示されたとは認められないとした審決の認定判断に誤りはない。

4  原告は、本願明細書の「制御回路6からメモリ4に出力されるAmemを引き延ばす必要があること」についても、そのような必要性についての認識がありさえすれば、本願明細書の記載から当業者が容易に実施し得るものであるとして、別紙図面2の構成を、その一例として示している。しかし、別紙図面2(a)の回路構成図は、書込み制御回路6の構成を示すものとは認められないことは前示のとおりであるから、原告の主張は採用することができない。

したがって、平成9年7月22日付手続補正書の(2)、(3)の補正に関し、Amemを引き延ばす必要があることを述べるのみで、その具体的技術手段の開示は全くなく、この補正によっても、「メモリと中央処理装置とを同期させて動作させる」ことの技術的内容が開示されたとは認められないとした審決の判断に誤りはない。

5  以上のとおりでなるから、「前記メモリと前記中央処理装置とを同期させて動作させる」、「メモリ4は、高速で動作している中央演算処理装置1と同期してメモリ書込み動作に入る」に関する事項は、当業者が理解し、容易に実施しうる程度に開示されたとは認められないとした審決の認定判断に誤りはなく、審決には原告主張の違法はない。

第3  結論

よって、原告の本訴請求は、理由がないから、これを棄却することとし、訴訟費用の負担について行政事件訴訟法7条、民事訴訟法61条を適用して、主文のとおり判決する。

(口頭弁論終結日・平成11年3月4日)

(裁判長裁判官 清永利亮 裁判官 山田知司 裁判官 宍戸充)

別紙図面1

<省略>

別紙図面2

<省略>

理由

A. 手続きの経緯等

本願は、昭和63年9月1日の出願であつて、補正された明細書及び図面の記載からみて、「マイクロコンピュータ」に関するものと認める。

B. 当審の拒絶理由

当審において、平成9年5月14日付けで通知した拒絶の理由は次のとおりである。

本件出願は、明細書及び図面の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第3項及び第4項に規定する要件を満たしていない。

出願人は、平成9年4月8日付け手続補正書で

(1)出願人は特許請求の範囲を補正し「第2のクロック信号に同期させて前記中央処理装置からのアドレスを前記メモリに出力して前記メモリと前記中央処理装置とを同期させて動作させる」ことを要件とし、さらに、

(2)明細書の第4頁第13行目ないし第5頁第6行目を補正することにより、「・・・中央演算処理装置に第2のクロック信号を供給して当該第2のクロック信号に同期させて中央演算処理装置からのアドレス(アドレス信号Acpu)をメモリに出力(アドレス信号Amem出力)してメモリと中央演算処理装置とを同期させて動作させる・・・」とし、

(3)明細書第7頁第15行目の後に文を挿入することにより、「メモリ4へのアドレス信号Amemは第2のクロック信号φcに同期してメモリ4へ出力されている。すなわち、処理装置1からのアドレス信号Acpuは書込み制御回路6を介してスルーされ、アドレス信号Amemとしてメモリ4に出力される。・・・。つまり、メモリ4は、高速で動作している中央演算処理装置1と同期してメモリ書込み動作に入ることができる・・」とし、

(4)明細書第10頁第10行目の後に文を挿入することにより、「制御手段は、中央演算処理装置に第2のクロック信号を供給して当該第2のクロック信号に同期させて中央演算処理装置からのアドレス出力をメモリに出力してメモリと中央演算処理装置とを同期させて動作させる機能を備えているので、メモリは、高速で動作している中央演算処理装置と同期してメモリ書込み動作に入ることができ、書込み動作も早く終了するとともに、このように早く終了することが中央演算処理装置の高速化に貢献する。」とした。

本願出願当初の明細書では、

(1)明細書第5頁4行乃至6行で、「中央処理装置1を前記メモリ4の動作に依存しない独自の速度で動作可能に構成したものである。」とし、

(2)明細書第7頁1行乃至5行で、「このクロック信号φがφcとして中央演算処理装置1にそのまま供給されている。また、クロックは信号φmについてはφcをメモリ4の動作速度に対応させて分周することによって生成されている。」とし、

(4)明細書第8頁4行乃至7行で、「これらの各信号を第2図(e)、(f)に示すようにクロック信号φmに対応した周期のアドレス信号Amemおよびデータ信号Dmemに変換し、メモリ4に入力する。」とし、

(5)明細書第8頁12行乃至14行で、「クロック信号φmの”L”レベル期間t3の間でアドレス信号Amemで指定されたアドレスにデータ信号Dmemが書き込まれる。」とし、

(6)明細書第8頁17行乃至9頁1行で、「中央演算処理装置1はアドレス信号Acpuとデータ信号Dcpuを送出した後は、・・制御回路6がこれらの信号を2倍の周期の信号に変換してメモリ4に送出してくれる」としている。

また、本願発明の実施例の動作を説明すためのタイムチャートの構成を示すブロック図とする第2図においても、そこに示される(a)乃至(g)の各信号が如何なる関係にあるのかは全く示されておらず、アドレス信号Amemが何を契機に変化し始め、たとえぱφc、Acpuと如何なる関係にあるかのか全く開示されていない。

さらに、クロック信号φmとアドレス信号Amemの関係も前記出願当初の明細書の(5)以上のものは存在せず、クロック信号φmによって制御されるメモリ4が、如何なるタイミングでアドレス信号Amemを取り込み、動作を開始するのかに関しては全く開示されていない。

前記補正書における、

(1)(2)(3)及び(4)の「前記メモリと前記中央処理装置とを同期させて動作させる」、「メモリ4は、高速で動作している中央演算処理装置1と同期してメモリ書込み動作に入る」が如何なることを意味するのか不明である。

(3)の「処理装置1からのアドレス信号Acpuは書込み制御回路6を介してスルーされ、アドレス信号Amemとしてメモリ4に出力される」が如何なることを意味し、本願出願当初の明細書での「変換」と如何なる関係にあるのか不明である。

C. 請求人の対応

これに対して、請求人は平成9年7月22日付け手続補正書により、発明の詳細な説明を補正した。この補正は、以下の通りである。

(1)明細書第7頁第15行目ないし第16行目に「送出する。・・・示すように」とあるのを次のように補正する。

「送出する。尚、第2図(e)に示すように、メモリ4へのアドレス信号Amemは第2のクロック信号のcに同期してメモリ4へ出力されている。すなわち、中央演算処理装置1かちのアドレス信号Acpuは書込み制御回路6を介してスルーされ、アドレス信号Amemとしてメモリ4に出力される。つまり、メモリ4へのアドレス出力は、中央演算処理装置1が出力したアドレスを書込み制御回路6が受けて直ちにメモリ4へ送出される(スルーされる)ので、早くアクセスを開始できる。これは、中央演算処理装置1のアドレス出力に同期させて(第2図(c)・(e))、そのアドレス出力サィクルからメモリ4へのアドレス出力を開始させるということ、即ち、メモリ4と中央演算処理装置1とを同期させて動作させ、時間の無駄をなくすようにしている。このように、メモリ4は、高速で動作している中央演算処理装置1と同期してメモリ書込み動作に入ることができる。言い換えれば、中央演算処理装置1が書き込みサイクルに入ったサイクルから同期して、アクセスに遅延なく、メモリ4も書き込みサイクルに入る(第2図(c)・(e)で示すように、中央演算処理装置1の書き込みサイクルであるt2の前半に同期して同時にメモリ4も書き込みサイクルに入っている)ので、書込み動作も早く終了するとともに、このように早く終了することが中央演算処理装置1の高速化に貢献する。また、第2図(d)に示すように、」

(2)同書第8頁第7行目に「なお、」とあるのを次のように補正する。

「すなわち、中央演算処理装置1からのアドレス、データ出力は、中央演算処理装置1のクロック信号φcで動作しているため、クロック信号φcの1サイクル分しか、アドレス、データが出力されないので、メモリ4をアクセスするための時間を得るため、書込み制御回路6により中央演算処理装置1のアドレス、データ出力を受けて、メモリ4に必要な時間、メモリ4用のアドレス、データ出力をメモリ4に与えるようにするため、メモリ4用のアドレス、データ出力時間を調整する(延ばす)処理を「変換」と称している。厳密には、このように変換された(延長された)メモリ4用のアドレス、データ出力時間中に出力されるアドレス信号Amem、データ信号Dmemがメモリ4に入力される。尚、」

(3)同書第8頁第15行目に「従って、」とあるのを次のように補正する。

「ここで、中央演算処理装置1がメモリ4のあるアドレスにデータを書き込む場合の動作について簡潔に説明する。

まず、中央演算処理装置1が、クロック信号φcに同期して、第2図(c)、(d)に示すように(尚、次のサイクルは、中央演算処理装置1の次の処理を実行していることを示している。)、メモリ4に対してアドレス及びデータを出力する。ここで、書き込み動作であるということは、中央演算処理装置1からの書き込み制御信号5により制御する。メモリ4は、中央演算処理装置1のクロック信号φcのサイクルでは書き込みが終了しないので、書き込み時間を中央演算処理装置1のクロック信号φcのサイクルより長くとってメモリ4をアクセスさせる。つまり、まず、書き込み制御回路6は、書き込み制御信号5を受けて、メモリ4へのデータ書き込みのため、クロツク信号φcに同期して出力したAcpuのアドレスをt3のサイクルまで引き延ばし、かつ同様に、Acpuのアドレスに対応したDcpuの書き込みデータも、t3の間、データがメモリ4に与えられるように引き延ばす(第2図(c)、(d))。次に、書き込み制御回路6からの書き込み制御信号9は、中央演算処理装置1からの書き込み制御信号5を受けて、メモリ4に与えられるため、書き込み動作に必要な時間、例えばt2の間、メモリ4に出力する。これにより、t2の間、Amemがメモリ4に出力される(第2図(e))。そして、メモリ4の書き込みサイクルt2の間に、書き込み制御信号5により、書き込み制御回路6は、クロック信号φmを生成してメモリ4に出力する。よって、指定したアドレスAmemに、クロック信号φmの“L”レベルの期間、データDmemが書き込まれる(第2図(8)、(f))。メモリ4は、アドレス、データ、書き込み制御信号、そしてクロック信号φm(動作クロック)を与えることで動作する。アクセス時間は、メモリ4に合わせた時間が必要となるので、この時間を、必要な時に得るように、書き込み制御回路6で調整する。従って、」

D. 当審の判断

(1)上記C.(1)で、Amemの開始に関して、「第2図(e)に示すように、メモリ4へのアドレス信号Amemは第2のクロック信号φcに同期してメモリ4へ出力されている」としてるが、第2図中にも、明細書の同図の説明にもにも、第2のクロック信号φcとアドレス信号Amemとが、それらの生成過程及びタイミングにおいて如何なる関係にあるのかは全く開示されていない。よって第2図が、上記の「同期」がなにを意味するのか示すものとは認められない。

(2)上記C.(1)で、「中央演算処理装置1からのアドレス信号Acpuは書込み制御回路6を介してスルーされ、アドレス信号Amemとしてメモリ4に出力される。つまり、メモリ4へのアドレス出力は、中央演算処理装置1が出力したアドレスを書込み制御回路6が受けて直ちにメモリ4へ送出される(スルーされる)」としている。しかし、「アドレスを書込み制御回路6が受けて直ちにメモリ4へ送出(スルーする)」の「直ちに」が如何なる技術的意味を有するのかは全く説明されていない。また、アドレスを受けて直ちにメモリ4へ送出(スルーする)するための制御回路6の構成も全く開示されていない。そのため、上記補正によっても、中央演算処理装置1・制御回路6・メモリ4の構成、それらの制御関係あるいはタイミング関係等技術的内容が開示され、「同期」に関する事項が開示されたとは認められない。

(3)上記C.(2)(3)では、制御回路6からメモリ4に出力されるAmemを引き延ばす必要があることを述べるのみで、その具体的技術手段の開示は全くない。この補正によっても、「メモリと中央処理装置とを同期させて動作させる」ことの技術的内容が開示されたとは認められない。

以上のように、上記拒絶理由で記載不備と指摘した「前記メモリと前記中央処理装置とを同期させて動作させる」、「メモリ4は、高速で動作している中央演算処理装置1と同期してメモリ書込み動作に入る」に関する事項は当業者が理解し、容易に実施しうる程度に開示されたとは認められない。

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